ゴミ屋敷問題の全国的な実態を正確に把握するための、統一された統計は存在しません。しかし、各地方自治体が独自に行っている調査や、公表されている相談件数、そして「ゴミ屋敷条例」の制定状況などを分析することで、その全国的な傾向と広がりを読み解くことができます。まず、多くの自治体の報告から見えてくるのは、ゴミ屋敷の住人の「高齢化」という顕著な傾向です。相談が寄せられるケースの半数以上が、65歳以上の高齢者世帯であると報告する自治体は少なくありません。加齢による身体機能の低下でゴミ出しが困難になったり、認知症の進行で判断力が低下したり、あるいは配偶者との死別による孤独感からセルフネグレクトに陥ったりと、高齢化社会が抱える問題が、ゴミ屋敷という形で凝縮されて現れています。次に、「単身世帯」の多さも共通した特徴です。家族や同居人がいれば、問題が深刻化する前に、誰かが気づき、介入することができます。しかし、一人暮らしの場合、誰の目も届かず、社会との繋がりも希薄なため、問題が極限まで進行しやすいのです。これは、高齢者だけでなく、若年層や中年層の単身世帯にも見られる傾向です。また、地理的な分布を見ると、かつては都市部の問題と捉えられがちでしたが、現在では、地方の市町村においても、相談件数は年々増加しており、ゴミ屋敷問題が、もはや都市部だけの問題ではなく、全国的な課題となっていることが分かります。こうした状況を受け、ゴミ屋敷への対策を強化する自治体も増えています。全国の市区町村のうち、ゴミ屋敷問題に特化した条例を制定している自治体の数は、年々増加の一途をたどっています。これらの条例は、行政がより踏み込んだ対応を可能にするための法的根拠となります。これらの断片的なデータをつなぎ合わせることで見えてくるのは、高齢化と孤立化という、現代日本社会の構造的な課題を背景に、ゴミ屋敷という問題が、静かに、しかし確実に、全国へと広がり続けているという、紛れもない事実なのです。
自治体データから見るゴミ屋敷の全国的な傾向