私の部屋は、世間では「ゴミ屋敷」と呼ばれているだろう。しかし、私にとってここは「ワンダーランド」であり、物の一つ一つが、カオスの中に息づく大切な記憶だった。かつて大切だった物、いつか使うかもしれない物、そして、人からもらった思い出の品々。それらは全て、私だけの歴史を語り、私の心を慰めてくれる存在だった。外の世界は、私を常に評価し、消費を促し、そして時に私を傷つけた。しかし、この部屋の中では、私は誰からも邪魔されず、誰の目も気にすることなく、私だけの時間と空間を過ごすことができた。物が多ければ多いほど、私は安心感を得られた。それは、まるで私を守ってくれる壁のようであり、孤独な心を埋めてくれる友のようでもあった。だから、物を捨てることは、私にとって、大切な記憶を消し去ることであり、私を守ってくれる壁を壊すことのように感じられた。一つ一つの物を手に取ると、買った時の高揚感や、それを使った時の出来事が鮮明に蘇る。この小さな世界の中には、私の過去が全て詰まっていた。外から見れば理解できないかもしれない。不衛生だと、危険だと、嘆かれるかもしれない。しかし、このカオスの中には、私だけの秩序があり、私だけの物語が息づいていたのだ。ただ、最近は、この世界が少し重荷になってきたことも事実だ。物の重みで床が軋む音、どこからか聞こえる虫の羽音、そして、もう何年も開けていない窓。この「私だけの世界」が、本当に私を幸せにしているのだろうか。カオスの中に息づく記憶たちは、私を慰める一方で、私をこの場所に閉じ込めているようにも感じられる。