かつてゴミ屋敷問題は大家さんと入居者との間の個人的な契約トラブルとして扱われがちでした。大家さんは入居者に対して片付けを迫り最終的には法的な手段で退去を求める。しかしこの対立的なアプローチでは問題の根本的な解決には至らず双方に深い傷を残すだけであることが次第に明らかになってきました。こうした中近年ゴミ屋敷問題解決の新たな潮流として注目されているのが「大家さんと福祉機関との連携」です。このアプローチはゴミ屋敷の住人を「契約違反者」として断罪するのではなく「支援を必要としている人」として捉え、その生活再建を地域社会全体でサポートしていくという考え方に基づいています。具体的には大家さんが入居者のゴミ屋敷化という異変に気づいた際にすぐに弁護士に相談するのではなく、まず地域の「地域包括支援センター」や「福祉課」といった福祉の専門機関に情報提供を行うことから始まります。もちろん個人情報保護の観点から慎重な対応は必要ですが、「入居者の生活状況が心配される」といった形で相談することは可能です。情報提供を受けた福祉機関はその専門的な知見から住人が抱える問題(高齢、病気、障害、貧困など)をアセスメントし必要な支援策を検討します。例えばケアマネージャーやソーシャルワーカーが本人と接触し介護保険サービスの導入や医療機関への受診、公的な経済支援制度の利用などを促していきます。そしてこれらの福祉的なサポートによって本人の生活基盤が安定し片付けへの意欲が生まれた段階で、大家さんが改めて部屋の原状回復について話し合いのテーブルに着くのです。この連携アプローチは従来の対立的な構図を「本人・大家・福祉」という三者間の「協力的な支援チーム」へと転換させます。時間はかかるかもしれませんが住人の尊厳を守り再発を防ぎそして大家さんにとっても訴訟などの負担を回避できる最も望ましい解決策と言えるでしょう。ゴミ屋敷問題の解決は「対決」から「支援」へ。そのパラダイムシフトが今始まっています。