ゴミ屋敷問題の最も深く、そして悲しい「問題点」の一つは、その当事者が「社会から孤立」していくという側面です。大量のゴミに囲まれて暮らすことは、物理的な不便さだけでなく、精神的な苦痛を伴い、社会とのつながりを断ち切る大きな要因となります。まず、ゴミ屋敷の住人は、自分の部屋の「惨状を他人に知られたくない」という強い羞恥心や罪悪感を抱いています。この感情が、友人や家族、近隣住民との交流を避ける行動へと繋がります。来客を拒否し、カーテンを閉め切り、夜間しか外出しないようになるなど、社会との接点を自ら断ち切ってしまうのです。これにより、孤独感や孤立感は一層深まり、精神的な負担が増大します。この孤独感は、うつ病や不安障害といった精神疾患の原因となったり、既存の精神疾患を悪化させたりすることもあります。次に、社会との接点を失うことで、「支援の手が届きにくくなる」という悪循環に陥ります。家族や友人からのサポートが減り、行政や福祉機関からの介入も困難になります。当事者自身も、助けを求めることへの抵抗感が強く、問題を一人で抱え込みがちです。このような状況では、問題がさらに深刻化し、自力での解決はほぼ不可能となります。また、ゴミ屋敷に暮らす人々の中には、うつ病、認知症、発達障害、ホーディング障害(ためこみ症)といった精神的な問題を抱えているケースが少なくありません。これらの疾患は、意欲の低下、集中力の欠如、判断力の低下などを引き起こし、社会生活への適応を困難にさせます。ゴミ屋敷という劣悪な環境は、これらの精神的な症状をさらに悪化させ、社会からの孤立を加速させる要因となります。さらに、ゴミ屋敷が引き起こす悪臭や害虫の発生、火災のリスクといった迷惑行為は、近隣住民からの苦情や非難を招き、当事者をますます追い詰めます。地域社会からの理解や共感が得られにくい状況は、当事者を社会の周縁へと追いやることになりかねません。このように、ゴミ屋敷問題は、当事者が社会から孤立していくという悲しい現実を内包しており、その解決には、単なる物理的な片付けだけでなく、当事者の心のケアと、社会とのつながりを再構築するための温かい支援が不可欠なのです。