ゴミ屋敷問題は、その不快さや危険性だけでなく、「経済的な損失」という側面においても、その物件の住人、オーナー、そして地域社会全体に深刻な影響を及ぼす大きな問題点です。これらの損失は、短期的だけでなく、長期的に経済活動に悪影響を与える可能性があります。まず、最も直接的に影響を受けるのは、ゴミ屋敷化した「物件自体の価値」です。ゴミ屋敷は、その立地や築年数に関わらず、市場価値が著しく低下します。売却を検討している場合、買い手が見つかりにくくなるだけでなく、通常の相場よりもかなり低い価格でしか売却できない可能性があります。清掃やリフォームに多額の費用をかけても、一度「ゴミ屋敷」というレッテルを貼られてしまった物件のイメージは、なかなか払拭されにくいのが現状です。賃貸物件の場合も、次の入居者を見つけるのが難しくなり、空室期間が長期化したり、家賃を下げざるを得なくなったりするなど、オーナーにとって継続的な収入に悪影響を及ぼします。次に、清掃や原状回復にかかる「高額な費用」が大きな経済的損失となります。ゴミの撤去費用、特殊清掃費用、消臭費用、害虫駆除費用、そして壁紙や床材の張替えといったリフォーム費用は、数十万円から数百万円、あるいはそれ以上に達することがあります。これらの費用は、ゴミ屋敷の住人が負担しきれない場合、貸し主であるオーナーや、最終的には行政が負担せざるを得なくなることもあり、大きな財政的負担となります。さらに、周辺の「近隣不動産の価値」にも悪影響を及びます。ゴミ屋敷から発生する悪臭、害虫の侵入、火災のリスク、景観の悪化などは、周辺の住宅の居住環境を損ない、その結果、隣接する物件の売却価格や賃貸物件の家賃にもマイナスの影響を与えます。これは、周辺住民にとっては、自身の資産価値を不当に奪われる経済的損失となります。また、ゴミ屋敷が地域全体の「イメージを低下」させることで、観光客や新たな住民の誘致が難しくなり、地域経済の活性化を阻害する要因にもなりかねません。このように、ゴミ屋敷問題は、その物件だけでなく、周辺地域や社会全体に広範囲にわたる経済的損失をもたらす、極めて重要な問題点なのです。
ゴミ屋敷による経済的損失