ゴミ屋敷問題は、所有者が存命の間だけではありません。所有者が亡くなった後、相続人が不在であったり、相続人が片付けを拒否したりすることで、家全体が巨大なゴミの山として放置される「空き家型ゴミ屋敷」が社会的な脅威となっています。これに対し、民法の相続編および「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が重要な役割を果たします。まず、所有者が亡くなった時点で、ゴミを含むすべての財産は相続人に引き継がれます(民法第八百九十六条)。相続人はそのゴミを適切に管理・処分する法的義務を負いますが、あまりの惨状に相続人全員が「相続放棄」を選択することがあります。相続放棄がなされると、その土地や建物は「誰のものでもない」状態になりますが、民法第九百四十条第一項は、放棄をした者であっても、次の相続人や管理人が管理を始めるまでは引き続き管理義務を負うと定めています。しかし、現実的にはこの義務を果たす者は少なく、自治体が対応に苦慮することになります。ここで登場するのが空き家対策特別措置法です。この法律により、自治体は「特定空き家」として認定した物件に対し、助言・指導、勧告、命令、そして行政代執行を行う権限が与えられました。特筆すべきは、相続人が不明な場合でも、裁判所の選任する「相続財産管理人」や、改正民法で新設された「所有者不明土地・建物管理制度」を活用して、法的にゴミの撤去と不動産の売却を進めることが可能になった点です。遺品整理という言葉は綺麗ですが、ゴミ屋敷の遺品整理は過酷な労働と多額の費用を伴います。相続法は、誰がその責任を負うべきかを明確に規定していますが、実効性を持たせるためには特別措置法のような行政的な強制力が欠かせません。ゴミ屋敷を未然に防ぐためには、生前からの適切な財産管理や、相続放棄がなされた後のスピーディな法的処理が求められます。法は、個人の死後においても、その残した負債が地域社会を破壊しないよう、所有のバトンを適切に受け渡す、あるいは解消するためのレールを敷いているのです。
遺品整理とゴミ屋敷化を未然に防ぐための相続法および空き家対策特別措置法