行政代執行によってゴミが撤去された後、所有者が直面するのは数百万円、時には一千万円を超える巨額の費用請求です。この費用は、行政代執行法に基づき、国税滞納処分の例によって徴収されます。ここで多くの人が考えるのが「自己破産をして支払いを免れる」という選択肢ですが、ここに大きな法的落とし穴があります。破産法第二百五十三条第一項は、免責が認められた場合でも支払わなければならない「非免責債権」を定めています。その中には、租税公課や、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金などが含まれます。行政代執行の費用がこの非免責債権に該当するかどうかは議論が分かれるところですが、実務上、公租公課に準ずるものとして扱われたり、故意にゴミを溜め続けて周囲に被害を与えた「悪意の不法行為」に関連するものと見なされたりして、破産してもなお支払い義務が残るケースがあります。この法的現実は、ゴミ屋敷の所有者にとって極めて過酷なものです。家は綺麗になったものの、一生かかっても返せないほどの負債を背負い、給与や年金、わずかな貯金までもが差し押さえの対象となります。法は義務を果たさない者に対して厳しい制裁を用意していますが、同時に「立ち直り」をどう支援するかという課題も残っています。自治体によっては、費用の分納を認めたり、本人の生活状況を鑑みて徴収を一時停止したりする運用を行っていますが、法的な債務そのものが消えるわけではありません。また、所有者が亡くなった場合、この巨額の負債は相続人に引き継がれます。相続人は、親が残したゴミ屋敷を片付けてもらった「代償」として、その負債を背負わされることになります。ゴミ屋敷を放置し、行政の警告を無視し続けることが、どれほど取り返しのつかない法的・経済的な破滅を招くか。この「法の厳しさ」を正しく周知することは、ゴミ屋敷化の抑止力として重要な意味を持っています。法は、権利を主張する者に味方しますが、社会的な義務を放棄し続けた者に対しては、非常に冷徹な一面を見せるのです。