ゴミ屋敷の問題を解決したいが、いきなり裁判で訴えるのは抵抗がある、あるいは費用や時間が心配だという場合に、非常に有効な選択肢となるのが「ADR(裁判外紛争解決手続)」です。これは、裁判所を通さずに、専門のメディエーター(仲裁人)が間に入って話し合いによる解決を目指す仕組みです。ゴミ屋敷訴訟は、一度始まれば敵対関係が決定定的になりますが、ADRであれば、互いの感情を尊重しつつ、柔軟な解決策を模索することができます。例えば、「一気にすべて捨てるのは難しいから、まずは庭のゴミだけを今月中に片付ける」「清掃費用は分割で支払う」「今後二度とゴミを溜めないために定期的に訪問を受け入れる」といった、裁判の判決では出せないような細かい約束事を交わすことが可能です。ADRの最大のメリットは、そのスピードと低コストです。訴えるとなれば年単位の時間がかかりますが、ADRなら数ヶ月での合意も可能です。また、話し合いの結果は「和解調書」として残すことができ、これには裁判の判決と同じような法的効力を持たせることができるため、約束が守られなかった場合には強制執行を行うこともできます。特に、ゴミ屋敷の主が「周囲から攻撃されている」と感じている場合、裁判という威圧的な場よりも、ADRのような対等な対話の場の方が、素直に心を開く傾向があります。弁護士会や自治体が運営するADRセンターには、不動産や福祉に精通した専門家が在籍しており、多角的な視点からアドバイスをくれます。訴えることは権利の主張ですが、ADRは「関係の修復」を目指す手続きです。ゴミ屋敷を解消した後に、また同じ地域で隣人として暮らしていくことを考えるなら、まずはこのADRというステップを検討する価値は十分にあります。もちろん、話し合いが決裂すれば訴えるしかありませんが、一度は歩み寄りの場を持ったという事実は、後の裁判でも「自分たちは最大限の努力をした」というプラスの評価に繋がります。戦う前に、まず対話のプロに委ねる。それが、賢明な大人のトラブル解決術と言えるでしょう。
裁判外紛争解決手続を活用してゴミ屋敷を訴えずに解決する方法