ゴミ屋敷という社会問題は、日本特有の現象であると誤解されがちですが、実際には「ホーディング(Hoarding)」という名称で世界各国が共通して抱える深刻な課題となっています。特に欧米諸国においては、個人の権利やプライバシーの尊重が日本以上に重視されるため、行政が民家に介入する際のハードルが非常に高く、事態が深刻化しやすい傾向にあります。日本におけるゴミ屋敷は、主に木造住宅の密集地や狭小なアパートで発生し、悪臭や害虫の被害が近隣に即座に波及することで表面化しますが、土地の広いアメリカなどでは、広大な庭やガレージが不用品で埋め尽くされ、周囲からはその異常事態が長年気づかれないことも少なくありません。また、捨てられる物の内容にも文化的な差異が顕著に表れます。日本では弁当の空き容器やペットボトルといった生活ゴミの蓄積が目立ちますが、消費文化が根強い欧米では、大量の衣類、電化製品、さらには何十年分もの新聞や雑誌、収集したガラクタが部屋を物理的に封鎖するほど積み上がるケースが多く見られます。さらに、宗教観や家族観の違いも影響を及ぼしており、孤独死やセルフネグレクトの文脈で語られることが多い日本に対し、海外では「物を失うことへの病的な恐怖」というメンタルヘルスの側面がより強調される傾向があります。特に、世界保健機関(WHO)が国際疾病分類において「ホーディング障害」を独立した疾患として認めたことで、世界的にこの問題は単なる掃除の問題ではなく、医療的な支援が必要な精神疾患であるという認識が定着し始めました。行政による強制的なゴミの撤去、いわゆる行政代執行の手続きも、国によって法律の整備状況は異なり、個人の所有権と公共の安全のバランスをどう取るかという議論は、どの国においても司法や行政の現場を悩ませ続けています。近年では、グローバル化に伴う都市部の過密化や、独居高齢者の増加という共通の社会的背景により、ゴミ屋敷の発生メカニズムも似通ってきており、日本の清掃業者や自治体が海外の事例を参考にすることも増えています。